スペイン語の巻き舌(rr)のやり方:ら行から始める7ステップ
巻き舌は歯茎ふるえ音という運動技能で、練習すれば身につきます。しかも日本語のら行が、その半分をすでに運んでくれています。
スペイン語の巻き舌はどうやって出すのですか?
舌先を上の前歯の裏にある歯茎の出っ張りに、力を抜いて軽く当てます。そのまま一定の息を流すと、ゆるんだ舌先が息に押されて勝手に震えます。力ではなく息が作る音なので、誰でも練習で身につけられる運動技能です。しかもスペイン語の R は2種類あり、片方は日本語のら行とほぼ同じ音なので、すでに出せています。
巻き舌は才能ではなく技術です
目指している音には名前があります。歯茎ふるえ音といい、国際音声記号では /r/ と書きます。歯茎というのは上の前歯のすぐ裏にある、少しでこぼこした固い出っ張りのことです。ふるえ音というのは、舌先がそこで震えるという意味です。ウィキペディアの alveolar trill の項目によると、その震えは1秒におよそ36回から44回起きています。
この数字はもう一度読む価値があります。練習の考え方が変わるからです。舌を1秒に40回も意図的に動かせる人はいませんし、その必要もありません。ゆるんだ舌先と一定の息、この2つを用意すれば、震えは物理が勝手に作ってくれます。
日本語話者には、うれしい出発点も2つあります。ひとつは、あとで詳しく見るように、ら行がすでにスペイン語の片方の R とほぼ同じ音だということ。もうひとつは、怒ったときやべらんめえ調で使う「巻き舌」が出せる人なら、その時点で目的の音がもう出ているということです。あとは狙って出せるようにするだけです。
もし出遅れた気がしていても、そんなことはありません。ふるえ音はスペイン語を母語とする子どもが最後に習得する子音です。スペイン語のふるえ音の習得研究をまとめた論文によると、習得率が50%に届くのは4歳7か月ごろで、しっかり定着するのは5歳から7歳の間が普通だそうです。一日じゅうスペイン語を浴びている子どもでも数年かかります。こちらはまだ1週間です。
スペイン語の R は2つ、日本語のら行は1つ
日本語のら行は1種類です。「から」「それ」「さくら」のら行も、勢いよく言う巻き舌のら行も、日本語では同じ音として扱われ、意味は変わりません。
スペイン語では変わります。はじき音は舌先が一度だけ軽く弾く音で、IPA では /ɾ/ と書きます。ふるえ音は2回か3回続けて震える音で、/r/ と書きます。スペイン語はこの2つを別の子音として区別するため、片方をもう片方に入れ替えると単語そのものが変わってしまいます。
先に落とし穴をひとつ。カタカナで書くと、この区別は消えてしまいます。pero も perro も「ペロ」になり、caro も carro も「カロ」寄りになります。表記に頼らず、耳と舌で覚えてください。
どこでどちらになるかは規則で決まっています。スペインでも中南米でも同じです。
| r の位置 | 音 | IPA | 例 | 意味 |
|---|---|---|---|---|
| 母音にはさまれた rr | ふるえ音 | /r/ | perro | 犬 |
| 語頭の r | ふるえ音 | /r/ | rojo | 赤 |
| l, n, s の後の r | ふるえ音 | /r/ | alrededor | まわりに |
| 母音にはさまれた1つの r | はじき音 | /ɾ/ | pero | しかし |
| 同じ音節内で子音の後にくる r | はじき音 | /ɾ/ | tres | 3 |
| 音節や語を閉じる r | たいていはじき音 | /ɾ/ | hablar | 話す |
2つの行は見直す価値があります。3行目の alrededor(まわりに)、sonrisa(笑顔)、Israel は r が1つなのにふるえ音です。前の音節を閉じる子音の後にきているからです。5行目は初心者が逆にしがちなところで、tres(3)と frío(寒い)は巻きたくなりますがはじき音です。全体の分布はウィキペディアの Spanish phonology にまとまっています。
区別が効いていることの証拠、ミニマルペア
| はじき音(r 1つ) | 意味 | ふるえ音(rr) | 意味 |
|---|---|---|---|
| pero /ˈpeɾo/ | しかし | perro /ˈpero/ | 犬 |
| caro /ˈkaɾo/ | 高い | carro /ˈkaro/ | 車(中南米)、荷車(スペイン) |
| coro /ˈkoɾo/ | 合唱団 | corro /ˈkoro/ | 私は走る |
| cero /ˈseɾo/ | ゼロ | cerro /ˈsero/ | 丘 |
スペインの大半では最後の組が /ˈθeɾo/、/ˈθero/ のように英語の th に近い音で始まりますが、R の対立はまったく同じです。この4組は練習素材として優秀なので、録音して自分で聞き分けられるか試してみてください。
はじき音:すでに出せているスペイン語の R
初心者に早く教えてもらえない、いい知らせがあります。日本語を話す人は、スペイン語のはじき音を毎日何十回も出しています。
さくらをふつうの速さで言ってみてください。次にそれ、から、あれ、はら。母音にはさまれたら行の音では、舌先が歯茎の出っ張りを一度だけ弾いて通り過ぎています。音声学ではこれをはじき音と呼び、記号もスペイン語とまったく同じ [ɾ] を使います。作るものは何もありません。
ほぼ必ず効く練習があります。「から」と言って、最初の音を p に変えるだけで、スペイン語の para(〜のために)になります。その感覚のまま下のリストを読んでみてください。
| 単語 | 意味 | 言い方 |
|---|---|---|
| para | 〜のために | 「から」のら をそのまま、パ-ラ |
| pero | しかし | ペ-ロ、「それ」のれ の感覚 |
| caro | 高い | カ-ロ |
| toro | 雄牛 | ト-ロ |
| cara | 顔 | カ-ラ |
| mira | 見て | ミ-ラ、「さくら」のら |
ただし日本語の習慣から来る落とし穴が2つあります。ひとつは母音を足してしまうこと。tres は「トレス」ではなく1音節で、t のすぐ後に軽いはじき音が続きます。frío も「フリオ」の3拍ではありません。もうひとつは語末の r で、hablar は「アブラール」で終わらせず、最後に短いはじき音を必ず置きます。日本語には語末の子音がないので、ここは意識しないと落ちます。
まずはじき音を固めてください。母音にはさまれた r すべて、tres や frío のような子音の後、そしてほとんどの音節末を担当するので、ふるえ音よりずっと出番が多いのです。そのうえふるえ音は、止まらずに続くはじき音のようなものなので、こちらが自動化すればあと一歩です。文字から整理したい場合は、スペイン語のアルファベットの表に音がひととおりまとまっています。
スペイン語の巻き舌のやり方:7ステップの練習手順
順番に、1日2〜3分ずつ進めてください。ステップ1と2はら行のおかげですぐ通過できるはずで、本当に新しいのは3以降です。1回で震えが出る人もいれば、数週間かかる人もいます。どちらもふつうで、急ぐとかえって遠回りになります。
- 1「さくら」で場所を見つける
さくら、それ、あれを自然な速さで言い、真ん中のら行の音で止めてみてください。舌先が当たる場所を確かめます。上の前歯のすぐ裏にある固い出っ張りで、歯そのものでもなく、奥の柔らかい上あごでもありません。スペイン語のふるえ音は必ずここで起きます。分かりにくければ、その場所に舌先を軽く当てて「ダ、ダ、ダ」と言ってみてください。
- 2はじき音を退屈になるまで繰り返す
「どどどど」を速く、ゆるく繰り返します。当たりは毎回とにかく軽くしてください。次に「から、から、から」と言いながら速度を上げ、ら の音が力みのない一撃になるまで続けます。そのままスペイン語へ移ります。para、pero、caro、toro。r 1つにつききれいな接触を1回、これが目標です。はじき音はふるえ音の材料なので、飛ばさないでください。
- 3全身の力を抜いて息を流す
あごを少し下げ、舌を広くやわらかくして、舌先を出っ張りに圧力ゼロで置きます。その状態で、鏡をくもらせるように一定の息を口から流し続けます。舌はいっさい動かそうとしないでください。ゆるんだ舌先の脇を通る息が震えを起こすのであって、力の入った舌はそもそも震えません。
- 4「ど」から助走をつける
何も震えないときは、息に助走をつけます。「ど」と言って舌の後ろに圧力を一瞬ためてから、そのまま長い息へ解き放ちます。ド-ルルル、ド-ルルル。車の「ブルルル」や、怒ったときのべらんめえ調の巻き舌に、最初の震えが隠れている人も多いです。その間も舌は受け身のままにしておきます。これは補助輪であってスペイン語ではありません。実際の単語 tres と frío ははじき音です。
- 5最初の震えをつかまえて伸ばす
最初の成功は、たいてい自分でも驚く偶然の一回です。そこで止めてすぐ再現を試み、次に息が続くかぎり保ってください。ルルルルルと2〜3秒。長い震えのほうが短い震えより簡単です。息が勢いをためる時間があるからです。合図ひとつで始められるようになるまで、長いほうを練習します。
- 6スペイン語の長さに縮める
実際のスペイン語のふるえ音は短く、接触は2回か3回程度です。5秒鳴り続けるバイクではありません。長く出せるようになったら短く切ります。ルル、ルル、ルル。次は母音ではさみます。母音が息を運んでくれるので、ここがいちばん楽です。ア-ルル-ア、オ-ルル-オ。これがそのまま carro と perro の形です。
- 7実際の単語へ、易しい位置から
まず母音にはさまれた rr から。carro、perro、tierra。次は語頭の R で rojo、rosa、ropa。前に母音がなく、無音から息を押し出すぶん難しくなります。最後は子音の後の r で alrededor、sonrisa、Israel。1語につきゆっくり10回、うまくいかなくてもそのまま進めてください。速さは最後に足すものです。
巻き舌がまだ出ない5つの理由と、その直し方
この音で止まっている人は、ほぼ全員が次の5つのどれかをしています。それぞれに対処法があります。
1. 舌に力が入っています。 これが最大の原因です。締めすぎたギターの弦が鳴らなくなるのと同じで、力の入った舌先は震えられません。息を強く吹きすぎるのも同じ問題で、口の中が固まって震えではなく「シュー」という音になります。あごがだるくなってきたら、いったん全部だらんとさせてやり直してください。
2. 舌を自分で動かそうとしています。 1秒に40回も舌先を動かせる人はいませんし、その必要もありません。ふるえ音は受け身の音です。仕事をするのは息で、舌は道をあけるだけです。
3. のどの奥で鳴らしています。 震えが口の奥で響いているなら、それは口蓋垂(のどちんこ)で作る R です。標準的なパリのフランス語と現代ドイツ語の R がこれにあたります。パリは17世紀後半から舌先の巻き舌を口蓋垂の R へ置き換えていきましたが、スペイン語とイタリア語は前のままにしました。震えを歯の裏の出っ張りまで前に持ってきてください。
4. カタカナのまま発音しています。 カタカナに直した時点で、pero と perro はどちらも「ペロ」になり、区別が消えます。さらに tres が「トレス」、frío が「フリオ」になると母音が増えて音節の形も崩れます。カタカナは覚えるための道具として使い、発音は必ず音から入ってください。
5. 1日でやめてしまいました。 運動技能はひらめきではなく反復で身につきます。1日3分は、日曜日に1時間いらいらするより効きます。スペイン語圏の子どもも何年も練習しているのですから、数週間はそれほど無茶な要求ではありません。
練習単語:易しい順に
このはしごを上から順に下りていってください。下のグループほど難しくなります。
レベル1:母音にはさまれた rr(ここから)
| 単語 | 意味 |
|---|---|
| carro | 車(中南米)、荷車(スペイン) |
| perro | 犬 |
| tierra | 大地、土地 |
| arroz | 米 |
| burro | ロバ |
| guitarra | ギター |
レベル2:語頭の R
| 単語 | 意味 |
|---|---|
| rojo | 赤 |
| rosa | バラ、ピンク |
| ropa | 服 |
| río | 川 |
| rico | 裕福な、おいしい |
レベル3:l, n, s の後の r
| 単語 | 意味 |
|---|---|
| alrededor | まわりに |
| sonrisa | 笑顔 |
| honra | 名誉、敬意 |
| Israel | イスラエル |
| enriquecer | 豊かにする |
レベル4:スペイン語圏の子どもが必ず通る早口言葉
Erre con erre cigarro, erre con erre barril, rápido ruedan los carros cargados de azúcar del ferrocarril.
おおよその意味は「エレとエレで葉巻、エレとエレで樽、鉄道の砂糖を積んだ荷車が速く転がる」です。ruedan の代わりに rápido corren los carros(荷車が速く走る)と言う人もいます。早口言葉は本ではなく耳から耳へ伝わるものだからです。まずはゆっくり、毎日少しずつ速くしていってください。
お金のかからない練習をもうひとつ。声に出して数えることです。スペイン語の数字には tres と cuatro のはじき音、cuarenta y cuatro のふるえ音が両方入っているので、60までゆっくり数えるだけで2つの音を同時に練習できます。同じような練習は無料のスペイン語レッスンにもそろっています。
それでも巻き舌が出ないときは
最後に、正直な話を2つしておきます。
ひとつめ。身体的な理由がある場合があります。舌小帯短縮症、いわゆる舌のつっぱりは舌先が持ち上がる範囲を制限します。ウィキペディアの歯茎ふるえ音の項目も、この状態の人はこの音を出すのが非常に難しい場合があると書いています。本当に力を抜いた状態で何か月も練習して何も変わらないなら、自分の失敗として片づけず、医師や言語聴覚士に相談してみてください。
ふたつめ。スペイン語の母語話者にも巻き舌ができない人はたくさんいます。はじき音で代用する人もいれば、まったく別の音を使う人もいて、そのままスペイン語で子どもを育てています。誰も気にしません。残りは文脈が引き受けてくれます。「mi pero se llama Luna」と聞いて、接続詞に名前をつけたと思う人はいないのです。
ですから巻き舌を目標にしつつ、自分に優しく練習して、できてもできなくてもスペイン語を話し続けてください。実際に使える文法のほうが、完璧な発音より遠くまで連れて行ってくれます。初心者が次にぶつかる分かれ道は、たいてい ser と estar です。
まとめ:スペイン語の巻き舌
巻き舌とは何か
歯茎ふるえ音 /r/ のことです。上の前歯の裏の出っ張りで舌先が震える音で、震えを起こすのは筋肉の力ではなく息の流れです。
スペイン語の R は2つ
pero(しかし)のはじき音 /ɾ/ と、perro(犬)のふるえ音 /r/。rr、語頭の r、l・n・s の後の r がふるえ音で、それ以外はすべてはじき音です。
はじき音はすでに出せる
「さくら」「それ」の母音にはさまれたら行がまさにその音で、記号も同じ [ɾ] です。ふるえ音より出番が多いので、こちらを先に固めてください。
カタカナでは区別が消える
pero も perro も「ペロ」になります。tres を「トレス」と読むと母音まで増えます。表記ではなく音から覚えるのが近道です。
核心のテクニック
舌の力を抜き、舌先を歯茎の出っ張りに置き、一定の息を流し、決して押さないこと。行き詰まったら「ど」から助走を。ド-ルルル。
出ないときは
母語話者にもはじき音で代用する人がいますし、舌小帯短縮症で本当に難しい場合もあります。それでもスペイン語は十分に通じます。練習も会話も続けてください。