ポルトガル語で「はい」と言う方法: sim と、ブラジル人が実際に使う答え方

sim は正解です。そして、いちばん耳にしない答えでもあります。ブラジル人がかわりに使うのは、実は日本語とよく似た返し方です。

By glot.space·

ポルトガル語で「はい」はどう言うの?

ポルトガル語で「はい」は sim で、鼻から抜ける「シン」のような音です。最後に m の音は出さず、唇も閉じません。ただ、ブラジルで sim を聞く回数は想像よりずっと少なめです。ブラジル人はふつう、質問に出てきた動詞をくり返して答えます。Você gosta? には Gosto。日本語で「好き?」に「好き」と返すのと同じ感覚です。この癖をつかめば、教科書っぽさが一気に消えます。

ポルトガル語の「はい」は sim、でも大事なのは音

sim は辞書どおりの答えで、間違いになることはありません。ブラジルでもポルトガルでも、面接でもメッセージでも使えます。つまずくのは音のほうです。

語末の m は子音ではありません。母音が鼻音であることを示す記号のようなもので、唇は最後まで閉じません。音は [sĩ] で、「イ」を鼻に通し、m や ng が出てくる前に切ります。

ここは日本語が味方になります。「ん」は語末で唇を閉じない鼻音なので、m を出さない感覚はすでに持っています。落とし穴はひとつだけで、日本語のシは少し「シュ」寄りの音だという点です。sim の s はもっと鋭く、「スィ」に近い音になります。

ポルトガル語発音意味
Sim「シン」(鼻から、m は出さない)はいVocê gosta de café? Sim. (コーヒーは好き? はい。)
Não「ナゥン」(鼻から、ng で切らない)いいえ / 〜ないNão, não gosto. (いいえ、好きじゃないです。)

この2語だけで、はい・いいえで答える質問にはすべて対応できます。ここから先が、ブラジル人らしく聞こえるための部分です。初級の教材にはほとんど出てきません。

sim を使わずにポルトガル語で「はい」と言う方法: 動詞をくり返す

先に日本語で確かめてみてください。「コーヒー好き?」と聞かれて、「はい」ではなく「好き」と答えることがよくあるはずです。「時間ある?」には「あるよ」。ブラジル人がしているのは、まったく同じことです。

ルールはシンプルです。質問から動詞を取り出し、eu の形にして、時制はそのまま、eu 自体は落とします。それが「はい」になります。Você gosta de café? なら Gosto。言語学ではこれをエコー応答と呼びますが、ブラジルではこちらが基本形で、気取った言い方ではありません。

質問自然な答え発音意味
Você gosta de café?Gosto.「ゴーストゥ」コーヒーは好き? – 好き。
Você é americano?Sou.「ソウ」アメリカ人ですか? – そうです。
Você tem dinheiro?Tenho.「テーニョ」お金ある? – あるよ。
Você vai à festa?Vou.「ヴォウ」パーティー行く? – 行く。
Você vem?Venho.「ヴェーニョ」来る? – 行くよ。
Gostou?Gostei.「ゴステイ」気に入った? – 気に入った。
Você assistiu esse filme?Assisti.「アシスチー」あの映画観た? – 観たよ。
Você entende inglês?Entendo.「エンテンドゥ」英語わかる? – わかる。
Você pode me fazer um favor?Posso.「ポーソ」お願いひとつ聞いてくれる? – いいよ。
Você já provou comida brasileira?Já.「ジャー」ブラジル料理はもう食べた? – もう食べた。

最後の行に注目してください。質問が já (もう) にかかっているときは、動詞を出すまでもなく Já のひと言で済みます。

もう少し温かくしたいときは、うしろに sim を足します。Gosto, sim. Sou, sim. Tenho, sim. これが「うん、好きだよ」にあたる強調版で、どこでも耳にします。

初心者がはまるのはここからで、ぎこちなく響くよりやっかいです。来ない sim を待っていると、はっきりした「はい」が目の前を素通りします。Tem lugar? (席ありますか?) と聞いて、相手が Tem と答えたのに、無視されたと思って立ち尽くす、という具合です。無視されていません。Tem がその「はい」でした。質問の主語が自分でないときは、動詞はそのままの形で残ります。

必要なのは、実際に使う20個ほどの動詞の eu の形だけです。それを固めるのが ポルトガル語の動詞ガイド です。

ポルトガル語で「はい」を伝える11の言い方、相づちから約束まで

「はい」にも強さの段階があります。日本語で「うん」「オッケー」「もちろん」を選び分けるのと同じように、ブラジル人も同意の強さを選んでいます。静かなほうから並べます。

ポルトガル語発音意味どんな響きか
Uhum「ウフン」(鼻から)うんいちばん静かな「はい」。口を閉じたままの相づち
Aham「アハン」うんうん同じ発想で、もう少し目が覚めた感じ。口調しだいで皮肉にもなる
Isso「イーソ」それそれ、そう相手が今言ったことを認める
Isso mesmo「イーソ メーズモ」まさにそれひとつ強い確認
Sim「シン」はいどこでも正解。ただし単独だとそっけなく響くことも
Tá / Tá bom「ター」/「ター ボン」オーケー、いいよ予定に同意するとき、くだけた場面で
Beleza「ベレーザ」いいね、問題なしスラング。友だちや気楽な場面で
Claro「クラーロ」もちろん温かく、動詞のエコーに次いでよく使われる
Exatamente「エザタメンチ」その通り強い同意。どんな場面でも使える
Com certeza「コン セルテーザ」間違いなく、ぜひ力強さと丁寧さを両立
Pois é「ポイス エー」だよね質問ではなく、相手の発言に同意する

このうち2つには注意書きが要ります。

Pois é は発言に返す言葉で、質問には答えません。 ここは日本語の「だよね」がそのまま当てはまります。友だちが Que calor hoje! (今日は暑いね!) と言えば Pois é がぴったり。ところが直接の質問に Pois é と返すと、何も答えていないことになります。「だよね」で質問に答えられないのと同じです。

Aham と uhum は口調が意味を決めます。 平らに素早く言えば「はい」ですが、ゆっくり下げて言うと「はいはい、そうですか」になります。日本語の相づちとまったく同じ仕組みです。

短い exato も耳にします。通じますが、ブラジル人がよく選ぶのは exatamente と isso mesmo です。あと2つ持っておくと便利なのが、あらたまった同意の sem dúvida (「セイン ドゥーヴィダ」、疑いなく) と、友だち同士の pode crer (「ポージ クレール」、確かに) です。こうした表現の多くは tudo bem? と聞かれた直後に出てきます。その受け答えは ポルトガル語で「元気?」 にまとめてあり、どれも 役立つポルトガル語の単語 の上位に並ぶものばかりです。

きつく響かせずにポルトガル語で「いいえ」と言う方法

ポルトガル語の「いいえ」は não です。単独ではぶっきらぼうで、ぴしゃりと言い切る「いいえ」に近くなります。ブラジル人はこれを絶えずやわらげていて、いちばん好まれるのが文末にもう一度 não を置く形です。Não vou, não。この2つ目の não は間違いでも方言でもありません。やわらかさそのものです。

ポルトガル語発音意味使う場面
Não「ナゥン」いいえ / 〜ない正しいが、単独ではそっけない
Não vou, não「ナゥン ヴォウ ナゥン」行かないよ (やわらかく)ふだんの断り方、親しみがある
Não sei, não「ナゥン セイ ナゥン」ちょっとわからないなやわらかく温かい曖昧さ
Não, obrigado / obrigada「ナゥン オブリガードゥ / ガーダ」いえ、けっこうです申し出を丁寧に断るとき
Infelizmente não posso「インフェリズメンチ ナゥン ポーソ」残念ながら無理です誘いを断るとき
Fica para a próxima「フィーカ プラ プローシマ」また次の機会に関係を開いたままにする
Nem pensar「ネイン ペンサール」とんでもないきっぱり、少し茶目っ気も
De jeito nenhum「ジ ジェイトゥ ネニュン」絶対に無理日常でいちばん強い「いいえ」
Que nada「キ ナーダ」まさか、とんでもない話を軽く受け流すとき

Não vou, não は Não vou より強く否定しているわけではありません。ただ親しみが増すだけで、肩をすくめて「行かないよ、ほんとに」と言うような感じです。教材はめったに触れませんが、ブラジル人は一日中これを使っています。

速い会話では最初の não が消えて、うしろだけが残ります。Sei não (「さあ、わかんない」)、Tem não (「もう無いよ」)。北東部 (Nordeste) をはじめ、くだけた会話ではどこでもよく耳にします。

丁寧に断るときは重ねます。ここはむしろ日本語の断り方に近く、ブラジル人も裸の「いいえ」を人に投げつけることはまずありません。Que pena, infelizmente não posso. Fica para a próxima! (残念、あいにく無理そうです。また次の機会に!) 残念がる、断る、扉を開けておく。この順番が定番です。

もうひとつが nem で、この言語でいちばん融通のきく否定語です。「〜も〜ない」を1語で担います。Não comi nem dormi は「食べても寝てもいない」。文頭に置くと、それだけで断りになります。Nem começa (やめてよ、始めないで)。

落とし穴: não は「いいえ」と「〜ない」を兼ねる

日本語では「いいえ」と「〜ない」は別の言葉ですが、ポルトガル語はこれを1語でこなします。だから実際の返事では2つ重なります。Não, não gosto。最初の não が断り、2つ目が gosto を否定します。偶然の重複ではありませんし、文末につく親しみの não とも別ものです。

文を否定するときは、não を動詞のすぐ前に置きます。Eu não gosto de café. Ela não vem. Nós não sabemos. ルールはこれだけです。

もうひとつ、こちらは日本語と同じ仕組みです。英語なら肯定の語を使う場面で、ポルトガル語は否定語を重ねます。

ポルトガル語意味直訳すると
Eu não vi nada.何も見ませんでした。「何も見なかった」
Não tem ninguém lá fora.外には誰もいません。「誰もいない」
Eu não tenho nenhuma pergunta.質問はまったくありません。「どの質問も無い」

日本語の「何も」「誰も」が必ず否定形とセットになるのと同じ発想なので、ここは覚え直す必要がありません。ただし違いが1か所あります。語順を入れ替えると、ポルトガル語では não が消えるのです。Ninguém veio (誰も来なかった)。日本語は「誰も来なかった」と、最後まで否定形を保ちます。ポルトガル語では否定語が先に来た時点で、否定は1回で足ります。

-ão の音を身につける

鼻母音は日本語にない音ですが、材料は持っています。4ステップで進めます。

  1. 鼻のわきに指を当てて、m をハミングします。この振動が鼻音性です。「ん」を伸ばすときに使っているものと同じです。
  2. 「アウ」と言って、口が閉じきる直前で止めます。
  3. もう一度言いながら、軟口蓋を下げて息を鼻にも通します。さきほどの振動が母音の上に乗っている状態が正解です。
  4. 舌を歯の裏の歯茎に当てないでください。não の最後に n も強い ング もありません。IPA では [nɐ̃w̃] で、鼻母音に鼻音の渡り音が続く形です。

sim も同じ要領で、[sĩ] は「イ」を鼻に通し、最後まで唇を開けたまま、m は出しません。ここでも「ん」の感覚が助けになります。-ão を一度つかめば、同じ終わり方の pão (パン) と irmão (兄弟) もそのまま読めるようになります。ポルトガル語の IPA 早見表 はブックマークしておく価値があります。

否定疑問への答え方と、pois não の謎

ここは日本語話者がいちばん間違えるところなので、先に結論から書きます。ポルトガル語の「はい・いいえ」は、質問の形ではなく事実に合わせます。日本語とは逆です。

日本語で「行かないの?」と聞かれたら、行かないときは「はい、行きません」と答えます。「はい」が質問の否定に同意しているわけです。ポルトガル語でこれをやると、正反対の意味になります。Você não vem? (来ないの?) と聞かれたら、行くなら Sim, venho、行かないなら Não, não venho。sim は必ず「行く」に、não は必ず「行かない」につきます。ここでも動詞のエコーがいちばん安全で、Venho とだけ返せば誤解のしようがありません。

そしてもうひとつ、字面と意味が逆に見える表現があります。

ポルトガル語発音字面の意味実際の意味
Pois não「ポイス ナゥン」「まあ、いいえ」もちろんです。どうぞ。何にいたしましょう?
Pois sim「ポイス シン」「まあ、はい」どうだか (信じていない皮肉)
Pois é「ポイス エー」「まあ、そうだ」だよね。確かに。

Pois não は 「はい」 です。não が入っていても意味は肯定で、店員やウェイター、先生が「もちろんです」の意味で使います。店員が Pois não? と声をかけてきたら「何かお探しですか?」という意味です。日本語の「結構です」が文脈しだいで承諾にも辞退にもなるのと同じで、字面ではなく使われ方で判断してください。

  • Pode me mostrar onde estão as havaianas? (ハワイアナスはどこにありますか?) → Pois não.
  • Professor, posso ir ao banheiro? (先生、トイレに行ってもいいですか?) → Pois não. Corre lá.

もともとは「いや、断るわけがないでしょう」といった長い反語表現が縮まったもので、não は答えではなく問いかけのほうに属していました。丁寧で接客の香りがする言い方なので、車で送ってと頼んできた友だちには使いません。

Pois sim は逆に働きます。友だちが「明日から毎朝5時にランニングする」と誓ったときに返す Pois sim は、同意ではありません。日本語の「はいはい」とそっくりで、「どうだか」という意味です。

ポルトガルについて正直に一言。sim という単語は両国でまったく同じです。ただ、ヨーロッパのポルトガル語はくだけた会話でも sim を気軽に使い、ブラジル人ならそこで動詞をくり返します。ポルトガル語の「はい」は大西洋のどちら側でも同じように働き、動詞のエコーも共通なので、ここで学んだことはそのまま持ち運べます。すでに知っている ブラジルの挨拶 と合わせれば、今日から短い会話ができます。

まとめ: ポルトガル語の「はい」と「いいえ」

  • ひと言で答えるなら

    Sim、[sĩ]、鼻から抜ける「シン」で、最後に m は出しません。いつでも正解ですが、いちばん自然な答えではありません。

  • ブラジル人が実際に言うこと

    質問の動詞を eu の形、同じ時制でくり返します。Você gosta? には Gosto、Você vem? には Venho。日本語で「好き?」に「好き」と返すのと同じです。強調したいときは sim を足して Gosto, sim。

  • もう答えをもらっているかも

    sim を待ち構えていると、Tem や Vou のひと言が素通りします。その動詞が「はい」でした。

  • 強さを選ぶ

    静かな順に uhum、isso、sim、tá、beleza、claro、exatamente、com certeza。Pois é は発言に返す言葉で、質問には答えません。日本語の「だよね」と同じです。

  • やわらかく断る

    não だけではそっけない響きです。文末にもう一度足す (Não vou, não) か、Infelizmente não posso と Fica para a próxima を使いましょう。

  • 逆に見える2つ

    Pois não は「もちろん」という肯定。Pois sim は「どうだか」という皮肉。字面ではなく使われ方で判断してください。

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