ポルトガル語で「おはよう」: bom dia・boa tarde・boa noite
時間で挨拶を選ぶ習慣は、もう身についています。ポルトガル語はそれを3つに分けるだけです。
ポルトガル語で「おはよう」はどう言うの?
ポルトガル語の挨拶は時計が決めます。朝から正午ごろまでは bom dia、正午から日が暮れるまでは boa tarde、日が沈んだあとは boa noite です。時間を問わない気軽な「やあ」なら、ブラジルでは oi、どこでも通じるのは olá です。
ポルトガル語で「おはよう」: 一日を分ける3つの挨拶
まず、いちばんうれしいところから。時間帯で挨拶を選ぶという発想は、日本語ですでに完成しています。おはようございます、こんにちは、こんばんは、おやすみなさい。この4つの引き出しを、考えずに開け閉めしているはずです。
ポルトガル語の引き出しは3つ。つまり新しい習慣を覚えるのではなく、1つ減らすだけで足ります。
こちらが全体像です。ブラジルの発音を IPA で添えたので、当て推量ではなく音の形をつかんでください。
| ポルトガル語 | IPA(ブラジル) | 読み方 | 日本語 | 使う場面 |
|---|---|---|---|---|
| Bom dia | /ˈbõ ˈd͡ʒi.ɐ/ | 「ボン ジーア」 | おはようございます | 起きてから正午ごろまで |
| Boa tarde | /ˈbo.ɐ ˈtaʁ.d͡ʒi/ | 「ボア タールジ」 | こんにちは | 正午から日が暮れるまで |
| Boa noite | /ˈbo.ɐ ˈnoj.t͡ʃi/ | 「ボア ノイチ」 | こんばんは / おやすみなさい | 日が沈んだあと、来るときも帰るときも |
3つ覚えれば、朝食から就寝までカバーできます。今すぐ順番に声に出してみてください。bom dia、boa tarde、boa noite。このリズムが暗記のほとんどを引き受けてくれます。
そして、日本語話者だけが受け取れる大きな贈り物があります。ブラジルのポルトガル語は、d と t のうしろに i が来ると「ジ」「チ」に変わります。英語やフランス語の話者はこの音をゼロから練習しますが、日本語には最初から「ち」も「じ」もあり、むしろ「ティ」「ディ」のほうが言いにくいくらいです。ほかの学習者がいちばん苦労する箇所を、そのまま素通りできます。
境界は時刻表ほど厳密ではなく、日没とともに動きます。時間帯だけでなく具体的な時刻も言いたくなったら、ポルトガル語の時間の言い方が続きを引き受けます。
boa noite が「こんばんは」と「おやすみなさい」を兼ねる理由
この課で覚え直しが必要なのは、実はここだけです。日本語は到着のこんばんはと、就寝のおやすみなさいをはっきり分けています。ポルトガル語は分けません。boa noite が両方を引き受けます。
ポルトガル語の標準的な辞書である Priberam は、boa noite を「cumprimento de chegada ou despedida」、つまり到着の挨拶でもあり別れの挨拶でもある、と定義しています。誤解される心配はありません。状況が意味を決めてくれるからです。夜9時にレストランへ入るときの boa noite は「こんばんは」。深夜1時に友人の家を出るときの boa noite は「おやすみなさい」。同じ2語です。
理由は、下にある名詞にあります。ポルトガル語の a noite は日没から始まるので、夕方はすでに「夜」の一部で、専用の言葉をもらえません。日本語は夕方と夜、そして就寝の場面をていねいに区別するので、ポルトガル語が1つで済ませるところに2つの表現を用意しているわけです。
oi と olá: ポルトガル語で気軽に「やあ」と言う
時間帯の挨拶はていねいで、少しだけあらたまった響きがあります。気軽な「やあ」にあたるのは oi と olá です。どちらも時間を選びません。
| ポルトガル語 | IPA | 読み方 | 日本語 | ニュアンス |
|---|---|---|---|---|
| Oi | /ˈoj/ | 「オイ」 | やあ | ブラジルの日常。温かく、くだけた響き |
| Olá | /oˈla/ (BR), /ɔˈla/ (PT) | 「オラー」 | こんにちは | 中立的で、両国どちらでも安全 |
| Tudo bem? | /ˈtu.du ˈbẽj̃/ | 「トゥードゥ ベイン」 | 元気? | 挨拶のあとに必ず続く定番の質問 |
oi はブラジルの街角で必ず耳にします。olá はどこでも通じ、ポルトガルでは標準の選択です。どちらも性別や数によって形を変えないので、1人に言う oi も、20人の部屋に向けて言う oi も同じ形のままです。
早めに覚えておくと得をする癖がひとつあります。ブラジルでは、語尾を上げて言う oi は「え、何ですか?」という聞き返しにもなります。同じ語、違うメロディー、まったく別の役割です。
挨拶と様子うかがいをつなげると、いっきに地元の人らしくなります。「Oi, tudo bem?」。定番の返事は同じ言葉を使い回して「Tudo bem!」。日本語で「元気?」に「元気だよ」と返すのと同じ呼吸です。alô から tudo bem まで挨拶の全体像は、ポルトガル語の「こんにちは」がまとめています。
bom と boa の使い分け: 名詞が形を決める
ここは日本語にない考え方なので、ゆっくり進めます。ポルトガル語の名詞は、すべてが男性名詞か女性名詞のどちらかに属しています。生き物かどうかは関係ありません。机にも午後にも性別があります。そして、その名詞に付く形容詞は、名詞の所属に合わせて語尾を変えます。bom が男性形、boa が女性形です。
| 挨拶 | 下にある名詞 | 名詞の性 | bom と boa のどちらになるか |
|---|---|---|---|
| bom dia | o dia(日) | 男性名詞 | bom が男性形だから |
| boa tarde | a tarde(午後) | 女性名詞 | boa が女性形だから |
| boa noite | a noite(夜) | 女性名詞 | boa が女性形だから |
奇妙に感じるかもしれませんが、実は日本語にもよく似た仕組みがあります。助数詞です。日本語では、数える対象の種類によって前に付く語が変わります。鉛筆は一本、紙は一枚、猫は一匹、車は一台。「本」や「枚」を選ぶとき、理屈ではなく名詞の所属で判断しているはずです。ポルトガル語の性も、まったく同じ働き方をします。引き金が「細長いか」ではなく「男性名詞か女性名詞か」に変わるだけです。
そして助数詞と同じように、答えは名詞ごとに決まっていて、覚えるしかありません。ただし挨拶に関しては、覚える対象はたった3つです。dia は男性、tarde と noite は女性。それだけで一日が回ります。
最後にひとつ注意を。dia は -a で終わるのに男性名詞です。この例外があるせいで、初心者はつい bom tarde と言ってしまいます。ブラジル人は理解したうえで、そっと直してくれます。
挨拶の先へ: 日本語の14表現とポルトガル語の対応
挨拶が単独で使われることはめったにありません。日常でよく使う言い回しと、ブラジル人が返してくる言葉を並べました。
| 日本語 | ポルトガル語 | 読み方(ブラジル) | メモ |
|---|---|---|---|
| おはようございます | Bom dia | 「ボン ジーア」 | 正午ごろまで |
| こんにちは | Boa tarde | 「ボア タールジ」 | 正午から日が暮れるまで |
| こんばんは | Boa noite | 「ボア ノイチ」 | 日が沈んだあと、到着のとき |
| おやすみなさい | Boa noite | 「ボア ノイチ」 | 帰るとき、寝る前 |
| やあ | Oi, Olá | 「オイ」「オラー」 | ブラジルでは oi、どこでも olá |
| 元気? | Tudo bem? | 「トゥードゥ ベイン」 | 返事にもそのまま使えます |
| ありがとう | Obrigado, Obrigada | 「オブリガードゥ」「オブリガーダ」 | 相手ではなく自分に合わせます |
| お願いします | Por favor | 「ポル ファヴォール」 | ポルトガルでは se faz favor も一般的 |
| どういたしまして | De nada | 「ジ ナーダ」 | 直訳すると「何でもないことから」 |
| すみません(通ります) | Com licença | 「コン リセンサ」 | 前を通るとき、話に割り込むとき |
| ごめんなさい | Desculpe | 「ジス クーピ」 | 本当に謝るとき |
| はじめまして | Muito prazer | 「ムイントゥ プラゼール」 | 人を紹介されたとき |
| さようなら | Tchau | 「チャウ」 | イタリア語の ciao から |
| またね | Até logo | 「アテー ローゴ」 | すぐまた会うとき |
この表で日本語話者がいちばん気をつけたいのは、すみませんの扱いです。日本語のすみませんは、前を通るときにも、謝るときにも、軽くお礼を言うときにも使えます。ポルトガル語はこれを分けます。通してほしいときは com licença、謝るときは desculpe です。1回整理しておけば、もう迷いません。
発音では2つだけ注意点があります。favor の v は、下唇を上の歯に当てて出す音で、日本語のバ行とは別物です。そして muito には表記されない鼻母音が隠れていて、「ムイントゥ」に近く響きます。「ムイート」ではありません。この表を印刷しておけば、リスボンでの1週間もサンパウロでの1か月も乗り切れます。
ブラジルとポルトガル: 同じ語、違う習慣
3つの挨拶は、大西洋のどちら側でもつづりが同じです。変わるのは音と、社会的な習慣です。
ブラジルのポルトガル語は、i の前の d と t を「ジ」「チ」に変えます。だから bom dia はリオでは「ボン ジーア」になり、リスボンでは「ボン ディーア」に近くなります。ヨーロッパのポルトガル語はその代わりにアクセントのない母音を圧縮するので、boa tarde の終わりは明確な「ジ」ではなく、ささやきのように消えていきます。
| 表現 | ブラジル | ポルトガル |
|---|---|---|
| bom dia | /ˈbõ ˈd͡ʒi.ɐ/ | /ˈbõ ˈdi.ɐ/ |
| boa tarde | /ˈbo.ɐ ˈtaʁ.d͡ʒi/ | /ˈbo.ɐ ˈtaɾ.dɨ/ |
| boa noite | /ˈbo.ɐ ˈnoj.t͡ʃi/ | /ˈbo.ɐ ˈnoj.tɨ/ |
| de nada | /d͡ʒi ˈna.dɐ/ | /dɨ ˈna.dɐ/ |
この表は、日本語話者にとってはむしろ朗報です。左の列、つまりブラジルの発音のほうが、日本語の音のレパートリーにぴったり収まります。「ジ」も「チ」も、意識せずに出せる音だからです。
もうひとつ予告しておくと、ブラジルでは音節の終わりの r が、子音というより息の音になります。por favor は本当に「ポ ファヴォー」に近く、prazer は「プラゼー」に近く響きます。日本語のハ行に近い、軽い息だと思ってください。ポルトガルではその代わりに、舌を一度だけ弾く r が聞こえます。日本語のラ行にかなり近い音です。
そして習慣の話です。oi はブラジルの日常の挨拶で、ポルトガルは olá を使い続けます。別れの言葉も分かれます。tchau はブラジルの標準的なさようならで、ポルトガルでは chau とつづります。本当の落とし穴は adeus です。ポルトガルではごく普通のさようならですが、ブラジルでは今生の別れに近い重さが出ます。tchau と言えば、永遠に去ると思われる心配はありません。ブラジルで話されている言語が続きを説明しています。
obrigado と obrigada: 全員がやってしまう間違い
日本語のありがとうは、誰が言っても形が変わりません。ポルトガル語のお礼は変わります。しかも、お礼を言われる相手ではなく、話している本人に合わせて変わります。
- 男性は obrigado(「オブリガードゥ」)と言います。
- 女性は obrigada(「オブリガーダ」)と言います。
これが規則のすべてです。男性が母親にお礼を言うときも obrigado のまま。女性が息子にお礼を言うときも obrigada のままです。こうなっているのは、obrigado がもともと「義務を負った」という意味の過去分詞だったからです。つまりこの語は、恩を受けた側であるあなた自身を描写しているのであって、恩をくれた相手を描写しているのではありません。
話し手によって言葉が変わる、という発想そのものは、実は日本語話者にはなじみがあります。同じ内容を伝えるのに、僕と言うか私と言うかで語が変わり、文末の響きも変わります。ポルトガル語も同じことをしていて、切り替えの引き金が話し手の性別に固定されているだけです。ここだけ押さえれば、あとは応用が利きます。
正直に付け加えておくと、ブラジルのくだけた話し言葉では女性が obrigado と言うのもよく耳にします。Wiktionary もその揺れを記録していますが、ていねいに書く人は今も誤りとして扱います。お礼にはくだけた仲間もあり、友人どうしの valeu などはポルトガル語の「ありがとう」が扱っています。
それでは、部品を組み立ててみましょう。午後3時にブラジルのカフェへ入るなら、もう必要なものはそろっています。入るときに「Boa tarde, tudo bem?」、出るときに「Obrigado」または「Obrigada」。これでポルトガル語の挨拶が最初から最後までつながりました。3語ずつ、着実に。ほかのレッスンはすべてポルトガル語のページにまとまっています。
まとめ: ポルトガル語の時間帯の挨拶
1語では足りません
ポルトガル語は時計で挨拶を選びます。bom dia、boa tarde、boa noite の3つで一日をカバーできます。
boa noite は二役
来るときは「こんばんは」、帰るときは「おやすみなさい」。同じ2語が両方をこなし、意味は状況が決めてくれます。
bom と boa
bom は o dia(男性名詞)に、boa は a tarde と a noite(女性名詞)に付きます。助数詞と同じで、名詞の所属が形を決めます。
時間を選ばない「やあ」
ブラジルでは oi、どこでも olá。どちらも性別や数で変化せず、時間帯も選びません。
obrigado と obrigada
語尾は聞き手ではなく話し手に合わせます。男性は obrigado、女性は obrigada。誰にお礼を言うかは関係ありません。
ブラジルとポルトガル
つづりは同じ、音は別。ブラジルは i の前の d と t をやわらげ、ポルトガルは語末の母音を飲み込みます。ブラジルでは adeus ではなく tchau を。